個人事業主や店舗経営者にとって、ホームページは名刺代わりの重要なツールです。しかし「無料で作れる」という言葉に惹かれて安易に始めると、後から取り返しのつかない問題に直面するケースが後を絶ちません。実際、2025年には20年以上運営されていた大手サービスが相次いで終了し、多くの方がホームページを失いました。この記事では、ホームページ無料作成の現実的な方法と、絶対に知っておくべき7つの注意点を、実例を交えながら解説します。
ホームページ無料作成ツールは本当に無料なのか?
2025年現在、ホームページを無料で作成できる主要なツールを比較しました。
| ツール名 | ページ数上限 | 容量制限 | 広告表示 | 独自ドメイン |
|---|---|---|---|---|
| Googleサイト | 無制限 | 無制限 | なし | 可 |
| Wix | 100ページ | 2GB | あり | 不可 |
| Jimdo | 5ページ | 500MB | あり | 不可 |
| ペライチ | 1ページ | 無制限 | あり | 不可 |
| STUDIO | 50ページ | 5GB | あり | 不可 |
最も重要なのは、「無料」の意味を正しく理解することです。WordPressは世界シェア42.7%を誇り、ツール本体は無料ですが、サーバー代(月1,000円程度)とドメイン代(年1,000〜3,000円)が別途必要になります。完全無料で使えるのはGoogleサイトですが、ビジネス利用を考えるなら機能面での制約も考慮が必要です。
- 独自ドメイン:yourcompany.comのような、自分だけのホームページアドレスのことです。
- サーバー:ホームページのデータを保管する、インターネット上の保管庫のようなものです。
【注意点1】20年続いた大手サービスも突然終了する現実
ホームページ無料作成で最も恐ろしいのは、運営会社の判断一つでサービスが突然終了してしまうことです。2025年6月30日にはFC2WEBと「お店のミカタ」が、11月18日にはgooブログが終了しました。特にFC2WEBは20年以上運営されていた大手サービスでしたが、システムの老朽化により保守が困難となり、終了を決定したのです。
この終了で何が起きたのか。多くの方が長年かけて蓄積したコンテンツと検索順位での評価を一瞬で失いました。調査機関のデータによると、終了したサービスのデータは画像が32%欠損し、動的なページは83%が正常に表示できなくなります。名刺やチラシに印刷したホームページアドレスも使えなくなり、お客様からの信頼も損なわれます。
大手企業が運営するサービスでも安心できないというのが、ホームページ無料作成の厳しい現実です。
【注意点2】広告表示があなたのビジネスの信頼性を破壊する
無料プランの最大のデメリットは、あなたとは無関係な広告が勝手に表示されることです。WixやJimdoなどの人気ツールでも、無料版では運営会社の広告が強制的に表示されます。しかも、競合他社の広告が出る可能性すらあるのです。
「無料で作成しました」というバナーがホームページの目立つ位置に表示されることで、プロフェッショナルな印象が損なわれます。せっかく訪問してくれたお客様が、広告をクリックして他のサイトへ流れてしまうリスクもあります。
広告を削除するには有料プランへの契約が必要で、一般的にWixは月1,200円から、Jimdoは月990円からの費用がかかります。結局「無料」ではないのです。
バナー:ホームページ上に表示される画像形式の広告のことです。
【注意点3】サブドメインでは検索で上位表示されない
無料プランでは独自ドメインが使えず、yourname.wix.comのようなサブドメイン形式のアドレスしか使用できません。これが検索順位に大きく影響します。
サブドメインは検索エンジンから独立したサイトとして認識されるため、評価がゼロからのスタートになります。一方、独自ドメインは継続して使うことで検索エンジンからの信頼が蓄積され、上位表示されやすくなります。
また、ビジネス用のメールアドレス(info@yourcompany.com)も作成できないため、お客様からの信頼性確保の面でも問題があります。サービスを変更する際も、独自ドメインなら同じアドレスを維持できますが、サブドメインでは新しいアドレスを一から周知しなければなりません。
- サブドメイン:元のホームページアドレスの前に追加される形式のアドレスです(例:yourname.wix.com)。検索エンジンからは別のサイトとして扱われます。
- 検索エンジン:GoogleやYahoo!など、インターネット上の情報を探すためのサービスです。
【注意点4】事業拡大したくてもページが増やせない制限
ホームページ無料作成ツールには厳しい機能制限があります。Jimdoは5ページ・500MBまで、ペライチは1ページ限定、Wixでも100ページ・2GBまでです。最初は十分でも、事業が成長してサービスメニューを増やしたり、お客様の声のページを追加したりする際に、すぐに上限に達してしまいます。
さらに問題なのは、問い合わせフォームの送信数制限、月間アクセス数の制限、データの引っ越し機能がないなど、ビジネスの成長を阻む要素が多数存在することです。事業が軌道に乗ってから「このサービスでは限界」と気づいても、他のサービスへの移行が極めて困難なのです。
MB(メガバイト)、GB(ギガバイト):データの容量を表す単位です。1GB=1000MBで、写真なら数百枚分のデータ量です。
【注意点5】検索対策の自由度が低くお客様に見つけてもらえない
ホームページ無料作成の最大の弱点は、検索で上位表示されるための対策がほとんどできないことです。
無料プランでは、Googleアナリティクスやサーチコンソールといった分析ツールが使えない場合が多く、「どんな人が何人訪問したか」という詳細なデータが分かりません。検索キーワードを設定する機能も制限されているため、お客様に見つけてもらいにくいのです。
業界の専門家によると、WordPressは検索対策の自由度が非常に高い一方、WixやJimdoは中程度にとどまります。無料プランではサーバーの性能制限によりページの表示速度が遅くなりがちで、これも検索順位に悪影響を及ぼします。本気で集客を考えるなら、無料ホームページでは限界があるのです。
- SEO(検索対策):GoogleやYahoo!で検索したときに、自分のホームページを上位に表示させるための工夫のことです。
- Googleアナリティクス:ホームページへの訪問者数や閲覧ページを詳しく分析できる無料ツールです。
【注意点6】困ったときに相談できる相手がいない不安
無料プランでは技術的な問題が起きても、相談できる窓口がないのが現実です。デザインのカスタマイズ方法、エラーが出たときの対処法、効果的なページ構成の相談など、すべて自分で調べて解決しなければなりません。
有料プランに移行すれば電話やチャットでのサポートが利用できますが、それでも専門的な相談には限界があります。ホームページの運営に不慣れな方にとって、このサポート体制の弱さは大きな時間の無駄となり、本業に集中できない原因となります。
何か問題が起きるたびに自分で調べる時間と労力を考えると、最初から適切な投資をした方が結果的に効率的なのです。
【注意点7】バックアップ機能がなく突然のデータ消失に無防備
多くの無料サービスにはデータの自動保存機能が提供されていません。サービス終了時やシステムトラブル発生時に、大切なコンテンツを保存・移行することが困難です。
WordPressへの移行を考えても、無料版の移行ツールは512MBまでという制限があり、写真を多く使ったホームページには対応できません。データの書き出し機能が制限されているツールも多く、他のサービスへの引っ越しが事実上不可能な「囲い込み」状態に陥るリスクがあります。
長年かけて作り上げたコンテンツが、ある日突然すべて失われる。これが、ホームページ無料作成の最も恐ろしいリスクなのです。
- バックアップ:大切なデータを別の場所にコピーして保存しておくことです。万が一のデータ消失に備えます。
- ベンダーロックイン(囲い込み):特定のサービスに依存してしまい、他のサービスに移れなくなる状態のことです。
まとめ:本当の意味での「無料」は存在しない
ホームページ無料作成ツールは、確かに初期費用を抑えて始められる魅力があります。しかし本記事で解説した7つの注意点—サービス終了リスク、広告表示、サブドメイン問題、機能制限、検索対策の限界、サポート不足、バックアップ欠如を考慮すると、ビジネス利用には向いていないのが現実です。
名刺代わりの簡易的なホームページであれば選択肢に入りますが、その場合でも最低限、独自ドメインと安全な通信(SSL対応)は必須です。本格的に集客を考えるなら、月1,000〜3,000円程度の投資で有料プランやWordPress+有料サーバーを選ぶことを強くおすすめします。
「無料」という言葉に惑わされず、長期的な事業成長を見据えた賢明な選択を心がけましょう。目先の節約が、将来の大きな損失につながることも少なくありません。

